もしも、あなたが宇宙飛行士で目の前にぽっかりと空いた“漆黒の穴”──ブラックホールが現れたらどうしますか?
逃げる間もなく、機体は重力に引かれてどんどん加速し、引き返せない地点「事象の地平線」に向かって落下していく……。
その瞬間、あなたは何を思い、何を感じるのでしょうか?
今回はそんな「もしもブラックホールに落ちたら?」という究極のシチュエーションを、SFではなく“科学的に”追いかけていきます。
ブラックホールに落ちたら、人はどうなる?
ブラックホールって、結局なに?
ブラックホールとは、重力が極限まで強く、光さえも脱出できない“時空の穴”のこと。
中でも代表的なものは、恒星の死によって生まれた「恒星質量ブラックホール」。
太陽の数倍以上の質量を持つ星が寿命を迎えたとき、超新星爆発を起こし、その残骸が自身の重力で潰れてブラックホールになります。
中心には「特異点」と呼ばれる無限の密度を持つ点があり、その周囲には“引き返せない境界線”──事象の地平線があります。
ここを一度越えると、どんな物質も、どんな情報も、外に戻ることはできません。
落ちたらどうなる?:理論的な“シナリオ”
外から見ると「止まっている」?
外から見ている仲間には、あなたが事象の地平線に近づくほど、だんだん“動きが遅く”見えます。
最終的には、時間が止まったかのように見え、赤く引き伸ばされながら、永遠に“そこに留まっている”ように映ります。
これは時間の伸び(重力による時間の遅れ)という現象で、アインシュタインの一般相対性理論が予測したとおりです。
落ちていくあなたの“体”は…
あなた自身にとっては時間は普通に流れ、事象の地平線を越えた後は、外の宇宙とは切り離されます。
このとき起きるのが有名な現象──スパゲッティ化。
ブラックホールの重力差で足と頭で受ける引力が異なり、体は縦に引き伸ばされてスパゲッティのようになってしまうのです。
ブラックホールの“中”に行けるのか?
「じゃあ、事象の地平線の中って何があるの?」
残念ながら、それは“誰にもわからない”。情報が外に出てこられないため、観測不可能なのです。
理論上は特異点にたどり着くとされますが、実際は不明。
一部の理論物理学者は「ワームホールを通じて別の宇宙につながっている可能性もある」とも考えています。
意識は?死ぬのか?タイムスリップするのか?
物理的には事象の地平線を越えた後は特異点に向かってすべてが進み、時間も空間も意味を失います。
ただし、主観的な意識では数秒の出来事かもしれません。
逆に外の観測者からすると、あなたは永遠に事象の地平線に“留まり続けている”ように見えるのです。
ブラックホールでタイムトラベルは可能?
回転するブラックホールやワームホールを通じて時間をさかのぼれるという仮説もありますが、現実的な壁が多数あります。
「過去に戻って自分を助ける」ことは、現段階の科学では“不可能”とされています。
まとめ・結論
もしもあなたが宇宙飛行士でブラックホールに吸い込まれたら、最後に何を思うでしょうか?
誰にも観測されない“無”に消えていく恐怖?
それとも、別の宇宙への扉をくぐるような冒険心?
ブラックホールは、私たちに「宇宙の謎」と「人間の限界」を突きつけてくる存在です。
そしていつか、本当にブラックホールの“先”を見た人類が現れる日が来る──
そんな未来が、すぐそこまで来ているのかもしれません。