カーブフィッティングEAを実際に作ってみた―無料配布EAに騙されるな―
■ EAとは?
みなさん、EA(Expert Advisor)ってご存じですか?
EAとは、一定のロジック(売買ルール)に従って自動でトレードを行うプログラムのことです。主にMT4やMT5といったプラットフォームで使われます。
X(旧Twitter)などで「EA」と検索すると、こんな投稿が大量に出てきます。
「勝てるEAを無料で配布します!」
でも、ちょっと考えてみてください。
本当に勝てるEAがあるなら、わざわざ配布なんてしなくても、自分で使って儲けるはずですよね?
結局、小遣い稼ぎやリスト収集が目的のケースがほとんどです。
■ 勝てるEAは存在するのか?
結論から言えば、「ずっと勝ち続けるEA」は存在しないと思っています。
なぜなら、相場は常に変化するものだからです。
同じロジックが通用する相場は限られています。
ただし、「その時々の相場に合わせて調整する」ことで、勝率を上げることは可能です。
つまり、EAに完全自動を求めるのではなく、管理と調整が必要な“道具”として使うべきなのです。
■ 他人が作成したEAには要注意
前述の「無料配布EA」は論外として、
「販売されているEA」なら信用できるのでしょうか?
- 高額EAだから勝てる?
- レビューが良いから安心?
答えは 微妙 です。
というのも、EAは使う環境によって結果が大きく変わるからです。
- 資産状況
- 通貨ペア
- 時間足
- スプレッド
- ブローカーの仕様 など…
販売者と同じ環境でない限り、同じパフォーマンスは期待できないのが現実です。
■ 「勝てるEA」のカラクリ
一見優秀に見えるEAの中には、リスクを隠した作りのものも多いです。
代表的な例を紹介します。
-
コツコツドカン型
TP(利確)を小さく、SL(損切り)を大きく設定しているタイプ。
勝率は高く見えますが、一発の損失で数十回分の利益が吹き飛ぶ危険なタイプです。 -
ナンピン・マーチンゲール型
含み損が出てもポジションを追加し、平均取得単価を下げていく方式。
勝てるときは強力ですが、連敗で口座破綻のリスクも。
バックテストの損益曲線に「下に尖ったトゲ」があるEAはこのタイプの可能性が高いです。
■ カーブフィッティングとは?
EA販売者は、過去の相場で勝てるようにロジックを調整していることが多いです。
これをカーブフィッティングと言います。
ただし、「カーブフィッティングされたEAは全部ダメ」とは限りません。
なぜなら、ある程度のフィッティングはどんなEAにも必ずあるからです。
また、裁量取引でも過去の相場を用いて今後の相場を予測するためある程度のフィッテングは生じます。
重要なのはその“程度”。
過剰に調整されたEAは、将来の相場では通用しない可能性が高くなります。
■ 実際にカーブフィッティングEAを作ってみた
今回は「RSI」を使って、よくある逆張り手法をEA(自動売買)化し、カーブフィッティングの実例を検証してみました。
- 通貨:USDJPY
- ロット数:0.01
- テスト期間:2018/1/1~2025/7/13
手法①:RSI逆張りEA
- 入金額:1000 USD
- 使用インジケーター:RSI(期間14)
- 買われすぎライン:70
- 売られすぎライン:30
- TP(テイクプロフィット):10
- SL(ストップロス):10
ルールは単純。「RSIが70を超えたら売り」「30を下回ったら買い」という、ありがちな逆張りスタイルです。
このルールでEAを動かすと、結果はこんな感じに。
…はい、ご覧のとおり、見事に右下がりです。
手法②:ナンピン追加で“それっぽく”
ここで、ナンピンロジックを追加。さらにカーブフィッティングを意識して、パラメータ最適化を行ったのがこちらの設定です。
- 入金額:10000 USD
- RSI期間:30
- 買われすぎライン:70
- 売られすぎライン:30
- ナンピン設定:20pips下げると0.02ロット追加
- TP:50
その結果がこちら。
たしかに勝ててはいるものの、「これは本当に信頼できるロジックなのか?」と疑いたくなる内容です。
手法③:さらに最適化&資金力でごまかす
もっと“右肩上がり”に見せたい…ということで、さらに「入金額」を増やしてみました。
- 入金額:10000 USD → 100000 USD
うまくカーブにはハマっていますが、資金を増やすことで無理やり「生き延びている」だけのようにも見えます。
結論:カーブフィッティングでEAは右肩上がりに「見せられる」
ご覧のとおり、カーブフィッティングを使えば、いかにも「勝てそうなEA」は簡単に作れます。
でも実際は、資金力があるからこそ成立するだけの不安定なロジック。
たしかに、資産に余裕があるなら試してもいいかもしれません。
ただし、リスクが高すぎて、実用にはとてもじゃないけど使えません。
■ EAを使うなら心得ておきたいこと
では、どんなEAなら使ってOKなのか?
以下のポイントを押さえましょう。
-
EAは「道具」と割り切る
魔法でも夢のツールでもなく、ただのルールの集合体。
使い方と管理がすべてです。 -
相場状況に応じて使い分ける
トレンド相場向け、レンジ相場向け、指標回避型など、
1つのEAで全部対応は無理。
常時稼働もリスクが高いです。 -
少額 or デモで検証
いきなり高ロットで回すのは危険。
バックテスト+フォワードテストが必須です。 -
ロジックを理解する
どんなルールで売買しているかを把握しないと、
リスクの管理もできません。
可能であれば自作もおすすめ。
■ 裁量 vs EA、どっちが向いてる?
これはよくある質問ですが、人それぞれのスタイルによります。
裁量が向いてる人 | EAが向いてる人 |
---|---|
・相場分析が好き ・自分で判断したい ・マイペースでやりたい |
・感情でトレードしがち ・チャートを見る時間がない ・ルールを守るのが苦手 |
おすすめは「裁量+EAのハイブリッド運用」
- EAでベースの収益を確保
- 裁量でトレンドやチャンスを狙う
- 苦手な時間帯だけEAに任せる
■ まとめ
EAは万能でも魔法のツールでもありません。しかし、正しく使えば強力な武器になります。
「放置で稼げる」「ずっと勝てる」…そんな甘い話は存在しない
EAは相場に合わせて調整・管理すべき“道具”です。
「どんなロジックか?」「どんなリスクがあるか?」を理解して、自分のトレードスタイルに組み込むことが重要です。
無料のEAだけは手を出さないように!
今自分が裁量取引で実践しているルールをEA化するというアプローチなら、リスク管理もしやすく、実用性があります。
本当に大切なのは、使い手の意識。
EAを使う前に、その中身・リスク・相場との相性を見極め、道具として使いこなす視点を持ちましょう。
EAと上手に付き合うことで、あなたのトレードの幅は確実に広がります。
焦らず、一つずつ検証しながら“あなたに合ったEA運用スタイル”を見つけていきましょう。
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